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 心の窓メルマガ版 25 「誤審」  
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誤審

出場か、辞退か・・・・・。県大会決勝での誤審をめぐり出場権を手にした選手も、校長も、悩みぬいた。年末に開幕した全国サッカー選手権。岡山県のA高校が1回戦で敗れた。校長は思った。初戦敗退は残念だったが、正直ホッとした。県大会優勝後が大変だった。「フェアーじゃない」「辞退しろ」。抗議のメールが学校のホームページに何通も届いた・・・。


岡山県大会決勝戦は延長にもつれ込んだ。前半3分、B高校のシュートがゴール左ポストを直撃、ボールはゴール内へ跳ね返り、右奥の支柱に当って転がり出てきた。Vゴールだ。
B高校イレブンは飛び跳ねて喜んだ。

だが、主審は顔を横に振ると試合を続行。全校大会への切符はPK戦でA高校がもぎ取った。閉会式の間、B高校の監督はビデオを手に大会役員に抗議したが、聞き入られなかった。

その光景をA高校のストライカーは黙って見ていた。小学生からサッカー一筋。このトーナメントでも4試合5得点のうち3点を彼が挙げた。問題のシュートは良く見えなかった。
しかし、帰宅後見たテレビ録画で、幻でなかったことを知る。顔色の変わりように母親が驚いた。翌朝、彼は仲間と一緒に校長から激励された。「勝因は君たちの執念だ」。「違う。勝因は誤審だ」と思った。

彼は主力10人を集めて問いかけた。「B高校の連中の気持ちを考えても自分は出場できない」。イレブンの意見は割れ、多数決になった。「出場が6人」。「辞退」は彼を含めて5人だった。

結論を彼は監督に伝えた。「気持ちは十分に分かった。でも、出る出ないはお前達が決められることじゃない」。監督はそう答えた。ストライカーは練習に出なくなった。

決勝の審判団4人は試合後、主催者の調べにミスを認めた。試合の4日後、協会は問題のシュートは「入っていた」と結論づけた。だか、A高校が優勝という試合結果は覆らなかった。

それでもストライカーの悩みは解けなかった。B高校の選手に電話もした。「自主退部する」と告げると、一人は「お前みたいなやつがA高校にもっとおりゃあいいのに」と言った。別の一人は、「気にせんでもええ」と励ました。家族の意見も二つに分かれた。

校長は困り果てた。教職員と話しあい、県高校体育連盟などにも相談した。そして校長は腹を決めた。「生徒は悪いことしとらん。ルールに従って選ばれた。出ないと判断したら組織が崩れる」

期末試験が終わるのをまって、会議室に呼び出した。「いきさつは聞いた。全国大会に出たくないと」「試合は負けでした。負けたのに出るのはおかしいと思います」制服姿のストライカーはきっぱりと言った。

「気持ちは分かる。でもな、社会に出たら、自分の主義主張だけでなく、人間関係も大事だぞ」「よく考えてみます」「世の中は助け合い。組織で動くもんだ。チームは君の力を必要としている。わからんか」「分かります。でも気持ちは変わりません」。2人だけで35分間。校長は「出てくれんか」と言いそうになるのを何回も飲み込んだ。骨のある子だと思った。別れ際に握手をした。

大みそか。ストライカーは自分の欠けた試合をテレビで見た。母親に一度だけ「東京に応援に行かせてあげられんでごめんな」と謝ったが、出場を辞退したことは今でも正しかったと思う。

校長は試合後、観客席で会う人ごとに「いい試合じゃった」と言った。元日の新聞に「出場してよかった」という選手達の談話が載った。校長も自分の決断は正しかったと思っている。
                   <出典:朝日新聞2003年1月5日35面>

これは、5年ほど前の新聞記事から出典しました。皆さんはどう感じられましたか?
だれが正しくてだれが間違っているということは誰もいえません。みんな悩んで、それぞれが何かを学んだのだと私は思います・・・。

ぴあの屋ドットコム 石山


ご感想をいただきました

Mさん
人の考え方は皆それぞれなので、誰が正しくて、誰が間違っているとはいいきれないですね・・。

水島工のストライカー原賀は今FC刈谷でDFをやっています。作陽の主将は確かジェフにいます。
彼らのサッカーの満足度は、すでに高校サッカーを超えた所にあったのではないでしょうか・・。
原賀はVゴールのときおかしいなと思ったのかもしれません。
誤りで国立競技場に立っことに彼は満足できなかったのかもしれません。
満足度は人それぞれです。

サッカーを続けて、プロになって、ずっとこのときのモチベーションを持ち続けるのもそれはそれですごいことだと思います。
自分に誇りをもって頑張って行ってほしいな・・と思います。



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