AI時代だからこそ、ピアノ調律師という仕事はなくならない

最近、「AIに仕事が奪われる時代」とよく言われます。
事務仕事や翻訳、プログラム作成、デザインまでAIができるようになり、工場ではロボットが人の代わりに働く時代になってきました。
そんな話を聞くたびに、「ピアノ調律師という仕事も、そのうちロボットがやるようになるんですか?」と聞かれることがあります。

私の答えはいつも同じです。
「調律師という仕事は、AIの時代になっても簡単にはなくならない仕事です。」
もちろん、電子機器を使った調律補助ソフトはどんどん進化しています。昔は耳だけで行っていた作業も、今では測定器がかなり正確にサポートしてくれます。
でも、それだけでは調律は完成しないのです。

ピアノは一台一台、すべて性格が違います。
同じヤマハの同じ機種でも、置かれてきた環境、弾かれ方、湿度や温度、製造されてからの年月によって状態はまったく違います。
人間でいうと、一人ひとり体格や性格が違うのと同じです。
だから調律師は、単に音程を合わせるだけではありません。

このピアノはどんな音を出したがっているのか。
お客様はどんな音を望んでいるのか。
ハンマーはどれくらい硬くなっているのか。
鍵盤の動きはどうか。
ペダルは快適に動くか。
そんなことを五感を使って判断しながら、一台のピアノを仕上げていきます。

AIは膨大なデータを分析することは得意です。
でも、「今日は少し柔らかい音色にしてほしい」「このお客様は明るい音が好きそうだな」といった感覚や、お客様との会話の中から理想の音を探していく仕事は、人だからこそできることだと思います。
さらに調律師の仕事は、技術だけではありません。

私は調律に伺うと、お客様といろいろなお話をします。
「お孫さんがピアノを始めたんですよ。」
「娘が久しぶりに弾き始めました。」
「このピアノは亡くなった父が買ってくれたんです。」
そんな話を聞くことがよくあります。

ピアノには思い出があります。
家族の歴史があります。
その思い出の詰まったピアノを、これからも気持ちよく弾いていただくためのお手伝いをするのが、私たち調律師です。
だから私は、調律師はサービス業でもあると思っています。
技術だけではなく、人との信頼関係がとても大切な仕事なのです。

そして、これから調律師を目指す若い人に伝えたいことがあります。
調律師という仕事は、決して楽な仕事ではありません。
重い工具を持って一日に何軒も回ることもあります。
夏は汗だくになりますし、冬は寒い部屋で作業することもあります。
細かい作業なので集中力も必要です。
でも、その苦労以上に大きな喜びがあります。

調律が終わって、お客様が最初の一音を弾いた瞬間に、
「わぁ、すごく良くなった!」
と言っていただけることがあります。
その笑顔を見るたびに、「この仕事をしていてよかった」と思います。

しかも、一度調律したら終わりではありません。
何年、何十年と同じお客様とお付き合いが続くことも珍しくありません。
子どもの頃に調律したピアノを、その子が大人になって結婚し、自分の子どもに弾かせるようになる。
そんな場面にも何度も立ち会ってきました。

こんなに長く人の人生に寄り添える仕事は、そう多くないと思います。
AIがどれだけ進化しても、人は音楽を楽しみ続けるでしょう。
そして、本物のピアノがある限り、それを最高の状態に保つ人が必要です。
私はこれからもそう信じています。

もしピアノが好きで、人と接することが好きで、手を動かして何かを作り上げることが好きな若い人がいるなら、ぜひ調律師という仕事を目指してほしいと思います。
決して派手な仕事ではありません。
しかし、人から感謝され、一生続けられ、自分自身も成長し続けられる、本当にやりがいのある仕事です。
AIにはできない仕事が、ここにはあります。

そして私は、これから先もその価値は決してなくならないと信じています。

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マーちゃん の紹介

ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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