ストリートピアノ考察

最近、街を歩いているとストリートピアノを見かけることが本当に増えました。
駅やショッピングモール、空港、公共施設など、「えっ、こんなところにピアノが!」と思うような場所にも置かれています。
私はピアノ調律師という仕事をしていますが、このストリートピアノが全国に広がってきたことには大賛成です。

「調律師だから、きっといろいろ文句を言うんでしょう?」と思われるかもしれませんが(笑)、実は逆なんです。
ピアノという楽器が、もっと身近な存在になったことが本当にうれしいのです。

昔はピアノといえば、「子どもの頃に習うもの」「家にある人だけが弾けるもの」というイメージが強かったように思います。でもストリートピアノは違います。
買い物の途中でも、旅行先でも、「ちょっと弾いてみようかな」と思ったらすぐに弾ける。
これはピアノ好きにとって、とても幸せなことです。

私は仕事柄、毎日のようにピアノに囲まれて生活していますが、それでも知らない街でストリートピアノを見つけると、つい座ってみたくなります。
「ちょっとだけですよ。」と言いながら、気が付けば何曲か弾いてしまうこともあります(笑)。
そして、もっとうれしいのは、大人になってからピアノを再開する人が増えるきっかけになっていることです。

子どもの頃にピアノを習っていたけれど、社会人になってやめてしまったという人は本当にたくさんいます。
そんな方がストリートピアノを見つけて、「懐かしいなぁ」と鍵盤に触れる。
最初は片手だけだったのが、だんだん両手になり、「やっぱりピアノって楽しいな」と思い出す。
そこから電子ピアノを買ったり、中古ピアノを探したり、レッスンを再開したり…。
そんなきっかけを数多く作ってくれているのがストリートピアノではないかと思っています。

その一方で、調律師として見ると、少しだけ気になることもあります。
やはりメンテナンスです。
無料で誰でも弾けるピアノですから、維持するにはお金がかかります。
調律をお願いするにも費用が必要ですし、部品交換や修理も必要になります。
ですから、中には音がかなり狂っているピアノや、鍵盤が戻らなかったり、音が出ない鍵盤があったりするものも見かけます。

もちろん、「もっとちゃんと管理してください!」なんて簡単には言えません。
無料で開放してくださっているだけでもありがたいことですし、運営されている方々も限られた予算の中で頑張っておられるのだと思います。
でも、心のどこかで「もう少しいい状態で弾いてもらえたら、ピアノの魅力がもっと伝わるのになぁ」と思ってしまうのも、調律師の性でしょうか(笑)。
そしてもう一つ、大切なのはマナーです。

ストリートピアノは「自由に弾ける場所」ですが、「好きなだけ独占していい場所」ではありません。
後ろで待っている人がいたら譲る。
演奏時間が決まっているなら守る。
これは最低限のルールですよね。

最近は「家にピアノがないから、ここで何時間も練習する」という話も耳にします。
気持ちはよく分かります。
でも、ストリートピアノは個人の練習室ではありません。
同じフレーズを何十分も繰り返していると、演奏している本人は一生懸命でも、周りで聴いている人にとっては少しつらい時間になってしまうこともあります。
ストリートピアノは、「練習する場所」というより、「音楽をみんなで楽しむ場所」。
そんな気持ちで利用すると、お互いに気持ちよく過ごせるのではないでしょうか。

設置する場所についても考える必要があります。
ピアノは美しい音を奏でる楽器ですが、音量は決して小さくありません。
静かな空間では、演奏している人は気持ちよくても、近くで仕事をしている人や勉強をしている人にとっては騒音になってしまうこともあります。
ストリートピアノが原因で撤去されてしまったというニュースを見るたびに、「もったいないなぁ」と感じます。

悪いのはピアノではありません。
設置場所なのか、運営方法なのか、それとも利用する側のマナーなのか。
どこかに少しだけ改善できる点があったのかもしれません。
せっかく始まった素晴らしい文化ですから、できるだけ長く続いてほしいと思います。

私はピアノ調律師として、これまで何千台というピアノに触れてきました。
でも、どんな高級なピアノよりも、誰かが笑顔で楽しそうに弾いているピアノの方が、ずっと価値があるように思うことがあります。
ストリートピアノには、知らない人同士が拍手を送り合ったり、小さな子どもが目を輝かせたり、外国から来た旅行者が思い出の一曲を奏でたりする、不思議な力があります。
音楽には、人と人をつなぐ力があります。

だから私は、これからもストリートピアノが全国に増えてほしいと思っています。
そして、設置する人も、演奏する人も、聴く人も、お互いを思いやる気持ちを少しずつ持てば、この文化はもっともっと素敵なものになるはずです。

ピアノ調律師として、そして一人のピアノ好きとして、これからも街のあちこちで、たくさんの笑顔と素敵な演奏が生まれることを願っています。

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マーちゃん の紹介

ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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