心の窓 25.人生の出会い

人生の出会い

 ワールドカップサッカーのデンマークチームと和歌山県のある少年との出会いのお話です。

練習は公開しないチームがほとんどだが、デンマークチームはすべての練習を公開した。

そのため日々の見学に訪れる人が増えていった。

練習後、握手会やサイン会もおこなわれ、いつも長蛇の列ができた。

その最中のこと。

トマソン選手の前にある少年が立った。

すこしもじもじしていた。

後ろにいた母親が「ほら! 早くしなさい」と少年に言った。

トマソン選手も「少しへんだなー」と思い、通訳を通じて「どうしたの?」と少年に聞いた。

意を決した少年は、ポケットから1枚の紙切れを出し、トマソン選手に渡した。

それは英語で書いた紙切れだった。

「僕は小さいころに病気にかかって、口と耳が不自由です・・・。

耳はきこえません。話もできません。だけど、サッカーだけはずーっと見てきました。

ぼくはサッカーが大好きです。デンマークのサドン選手と、トマソン選手が大好きです。

頑張ってください。」

その手紙に通訳の人も周りの人も驚いた。

だが、トマソン選手はニッコリと微笑み、少年に

「それなら手話はできますか」と手話で語りかけた。

その言葉に少年と母親は驚いた。

「手話はわかりませんか?」とトマソン選手は少年に聞いた。

手話を万国共通と思う人は多いですが、実は国によって違うのです。

そこで通訳は彼にこう言った。

「僕と少年は話をしたいので手伝ってください。

そして少年と話す時間を僕にくださいと周りの人に言ってください。」

後で順番を待つ人は誰も文句を言わなかった。

「二人に時間をあげたい」と思ったのでしょう。

そして二人の会話は始まった。

「君はサッカーが好きですか?」

「はい、大好きです」

「そうですか。デンマークを応援してくださいね」

「はい、あの、訊いていいですか?」

「いいですよ、何でも訊いてください」

「トマソン選手はどうして手話ができるのですか? 正直、びっくりしました」

この少年の質問に彼は答える。

「僕にも、君と同じ試練を持っている姉がいます。

その彼女のために僕は手話を覚えてたのですよ」

そして、トマソン選手は少年に言った。

「君の試練は、あなたにとって辛いことだと思いますが、

君と同じようにあなたの家族もその試練を共有しています。

君は一人ぼっちじゃないということを理解していますか?」

少年はこの言葉に黙ってうなずく。

「わかっているなら、オーケー誰にも辛い事はあります。

君にも僕にもそして君のお母さんにも辛いことはあるのです。

それを乗り越える勇気を持ってください」

このやりとりに涙が止まらない母親。

そしていつのまにか、周りの人々も涙していた。

トマソン選手は言った。

「今度の大会で僕が必ず1点を取ります。

その姿を見て君がこれからの人生を頑張れるように、僕は祈っています」

この言葉に少年は初めて笑顔を見せた。

「はい、応援しますから、頑張ってください」といってサインをもらいその場を後にした。

そしてトマソン選手は少年との約束を守り得点を決めた。

一点どころか、彼は四得点という大活躍であった。

デンマークの試合がどの国であろうと、和歌山県民は応援に駆けつけた。

そうした応援も実ったのだろう。

フランスと同組ながら、デンマークは2勝1分で見事1位通過を決めた。

「君には前も言った通り、試練が与えられている。

それは神様が決めたことであり、今は変えられない。僕が言いたい事、解りますか?」

「はい」

「神様は君に試練も与えたけど、君にも必ずゴールを決めるチャンスをくれるはずです。

そのチャンスを君は逃さず、ちゃんとゴールを決めてください」

とトマソン選手は言った。

この言葉に少年は満面の笑顔で「はい」と言った。

二人は仲良く写真に収まった・・・。

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マーちゃん

マーちゃん の紹介

ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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