心の窓メルマガ版 15 「月光の夏」

月光の夏

スペシャルオリンピックスという知的障がい者のためのオリンピックの世界大会が2年ほど前に長野で開催されました。そのトーチランが全国各地で開かれたのですが、京都でのトーチランにボランティア参加したときに、第1区を裏千家15代家元が走られました。準備体操で戦時中の海軍体操をされていたのがとても印象的でしたが、実は家元は元特攻隊員だったことを知りました。水戸黄門役で長く出演していた俳優のN氏と同じ部隊だったそうで生還したのはこのお二人だけだったそうです。

以前家元はこのようなことを語っていました。特攻隊の部隊の中で家元は茶をたてました。それを皆でいただきながら隊員の一人が言いました。「戦争が終わったらおまえは千家の跡取りとして偉くなっているだろう。もし生きて帰ってこられたら、おまえのことなんか知らんといわず、また茶をたててくれよな」。明日死ぬと分かっていても、まだ生きる望みを捨てていなかったのです。隊員たちは茶をいただき、親や恋人に手紙を書いたり、髪やつめを送ったりしていましたが、しばらくすると沈黙になりました。それぞれ思うことがあるのでしょう。全員が兵舎を飛び出し、夜空に向かって叫びました。みんな同じ言葉だったそうです。「おかあさーん!」

「月光の夏」という映画はご存知でしょうか。まもなく終戦記念日でもありますので、今回はこのお話しましょう。
佐賀県鳥栖市の小学校へ二人の若い特攻隊員が走ってきました。「自分たちはピアニストを目指していた芸大の学生だったのですが、今は特攻隊の隊員として明日出撃しなければなりません。死ぬ前にどうしてもピアノを弾きたくて、でもどこもオルガンしかなくてこの国民学校に唯一ピアノがあると聞き、基地からここまで走ってきたのです。どうかピアノを貸してくださいませんか?!」

それを聞いた音楽担当の女性の先生は1冊の楽譜を持ってきました。ベートーベンの月光ソナタです。この小学校にはドイツ製のフッペルという素晴らしいグランドピアノがありました。先生は空襲のたびにバケツを持ってこのピアノを守っていたのです。隊員は楽譜をピアノに置くと、1楽章2楽章と弾きつづけました。そして第3楽章が終わったとき、生徒たちから拍手が起こりました。

生徒の一人が声をかけました。子供たちにとって絹の白いマフラーをした特攻隊の隊員は憧れだったのです。「僕たちもあとに続きます!」。しかし、特攻隊のお兄さんはこう答えました。「君たちは行かなくていい。君たちが死ななくてもいいように、お兄さんたちが死んでいくんだよ。君たちは戦争が終わったらこの日本を立て直すんだ。いいね」。そうして翌日、飛び立って行ったのです。そう、今の70歳代くらいの人たちがこのとき小学生だったはずです。日本の高度成長を担ってきた人たちです。多くの若者の犠牲の上に今の日本があるのです。

鹿児島の南に知覧という町があります。その特攻基地から飛び立つ戦闘機に近くの女学生が桜の枝を戦闘機に差して見送りします。飛行機が飛び立つと空から桜の花がヒラヒラと落ちてくるのです。そうして羽を3度左右に振ります。これが「祖国よさらば」の合図です。ちょうど富士山とそっくりな形の開門岳が祖国日本の最後の姿なのです。それに別れを告げて、6000人もの若者が沖縄の海に散っていきました。

しかし、視点を逆にしてみましょう。ゼロ戦が突然突っ込んできて亡くなってしまったアメリカ艦隊の若者は7000人もいたそうです。特攻隊員と同じくらいの若者です。その子たちはお母さんや恋人にさよならをいう時間もなかったことでしょう。もちろん手紙を書く時間もありません。どちらが悲惨なのでしょう。いやどちらも悲惨です。戦争は悲しみしか残りません。

知覧特攻平和会館に何度か行きましたが、そこでいろいろなエピソードを知りました。
特攻隊の教官だった年配者の一人は、教え子が続々と出撃していく中で「必ずオレも後に続く!」と約束を繰り返していました。しかし、重要な職務を持ち妻と子二人の家族を持つ隊長には出撃命令は出されませんでした。何度嘆願書を出してもだめです。逆に妻は夫に死なないで欲しいと何度も説得を繰り返しました。しかし、夫の決意があまりにも固いことを悟った妻は、「私たちがいたのでは後顧の憂いになり、思う存分の活躍ができないでしょうから、一足お先に逝って待っています」と遺書を残し、3才と1才の女の子を連れて入水自殺してしまいました。引き上げられた妻子の遺体のそばで号泣した教官は再度血書嘆願を出しやっと出撃を認められたのです。教官の遺書には「母とともに消え去った幼い命がいとおしい まもなく会いにいくからね お父さんの膝でだっこして寝んねしようね それまで泣かずにまっていてください」と書かれていました。教え子との約束、家族を守る責任、そんな葛藤の中でこの教官は苦しんだことでしょう。
もう一つ忘れられない遺書があります。早くに母親をなくし継母にそだてられた若者は、一度も「おかあさん」と呼んだことがなかったのです。「でも本当に感謝している。その気持ちを伝えたことがなかった。明日散っていく命、最後にお母さんと呼ばせてください、おかあさん おかあさん おかあさん!」

私は講演でよくこんな話をします。「今の仕事で成功したとき、いや自分の決めた目標を達成したときには鹿児島に旅行にいきましょう。そして枕崎の少し北にある知覧特攻平和会館を訪ねてください。この日本を守るため、いや愛する人を守るためにどれだけの若者が死んでいったのか、そして今の時代に生まれた自分がなんと幸せなのかが分かると思います。そしてそれに気付いた時、自分は何をしなければならないかという答えが出てきますよ」。 

ぴあの屋ドットコム 石山

※ピアノソナタ「月光」による朗読劇「月光の夏」を電子書店パピレスで購入(500円)できます。(こちらから携帯電話三社の購入ページに飛ぶこともできるようになっています)
http://www.papy.co.jp/act/books/1-110987/

『ピアノソナタ「月光」による朗読劇「月光の夏」』との出会いについて、ブログを書かれている方がおられますのでご紹介します。
http://blog.goo.ne.jp/tkorganic/e/57ee41aa6607276cba3a4f6342b95e4b

ご感想をいただきました。

Oさん:
特攻隊で散っていった若い兵士。
多くの犠牲の上に、私達の今の平和があるということ。
深く心に刻み、忘れることなく
今を生きようと思います。

Sさん:
ありがとうございます。
涙がとまりません

命をかけて今の日本を残してくれた人たちが
居ることを忘れてはいけませんね・・・
教えられることがたくさんありました。
知覧特攻平和会館へいつか行ってきます。
いつも本当にありがとうございます。
それにしても、ろんなところで
ボランティアをされていますね・・・
そのことにも感激します

Kさん:
このお話は、以前聞いたことがあります。
悲しいお話、戦争の惨さ平和のありがたさ、いろんなことが頭の中をめぐりました。
改めて文字になったものを、何度か読み返しながら考えるとまたいろんな言葉が心の中に刺さってくるようで、辛いです。
この時代の若者たちに誇れる世の中にしなければ、報われない気がしますよね。
せめて、今の平和に感謝して大事に生きて生きたいと思います。

Bさん:
今日からお盆ですね。
皆さん個々にお仏壇・お墓の前で手を合わせることと思います。
日頃の無事に感謝する、とても大切なことです。
でも、ぴあの屋まーちゃんさんの今日のこの日記を読んで思いを新たにしました。
少しでいいから視野を拡げていきたいなと。
日本という国はもちろんのこと、世界各国がそれぞれに、幾多のそれこそ数え切れないこれまでの人達の貢献・犠牲の上にあっての今の恵まれた状況なんだということ。 決して、独りよがりではあってはならない。
この時期にまさしくマッチしたいい話、ありがとうございます。

Aさん:
知覧の兵隊さんの遺書読みました、涙が止まらず、ぼやけて
先が読めなくなった事を今でも思い出します。
私の父親は昭和20年11月フイリッピンで戦死しました、それも終戦後4ヶ月経過していたのですから、最後まで戦う、何のため?日本を守るためです。
自分の子供の顔も知らず、抱いてやることもなく、つらかったやろうと思います。

Oさん:
今から9年前に子供達が夏休みになるのを待って知覧の特攻平和会館に家族4人で広島から車で行きました。
今でも知覧でのあの時の衝撃は忘れられません。
毎年夏休みになると思い出していましたから、まーちゃんのお話しは私の感じた同じ思いがダブって伝わって来ました。
あれから暫くして私個人の人生のどん底が始まり、出口のない長いトンネルからやっと出られたのは、少なくとも戦争のない平和な時代に感謝出来たからだと思います。
その原点は9年前の知覧特攻平和会館での衝撃でした。
夏休みになると思い出します。
知覧に行き、平和とは、今の日本とは、家族とは何か、命とは、戦争とはなんだったのか考えてみて、そこから生きるエネルギーを得る事が出来れば、彼達も救われると思います。

Sさん:
いつもメールをありがとうございます。
読みながら泣き出しました。
今の生活に「本当に感謝」しなくてはいけませんね。そして、今、この気持ちを大切にします。
私にでも出来るかしら?
何を、どうやれば良いかしら?

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マーちゃん

マーちゃん の紹介

ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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