心の窓メルマガ版 41 「あるレジ打ちの女性」 

あるレジ打ちの女性

あるところに、何をしても長続きしない女性がいました。
「つまらない…やりたくない…私のやりたかったことじゃない…と言い訳ばかり。

大学のサークルも就職してからの仕事もすぐ辞めてしまいます。
気づけば彼女の履歴書は、たくさんの職歴が並ぶようになりました。

「どうせすぐ辞めるんじゃない?」
いつしか正社員として彼女を雇う会社はなくなっていきました。
その後、派遣社員となるも、やはりすぐ辞めてしまうのでした。

こんな私じゃダメだ…ガマン強くなりたい…でもどう頑張ってもなぜか続かない…。

そんな時にきた仕事が、スーパーのレジ打ちでした。
しかし数週間後、単純作業がイヤになり、結局また辞めたい衝動が彼女の心を襲います。

そんな矢先、電話が鳴りました。田舎の母からでした。
「もう、帰っておいで」

母の一言に心を固め、辞表を書き荷物をまとめ出した時、あるものを見つけました。
それは子どもの頃の日記でした。

「ピアノニストになりたい」

はっきりとそう書かれていました。
唯一、長く続けられたもの。それがピアノでした。

彼女の中で静かな変化が起こりました。
もう逃げるのはやめよう…。

「お母さん、私、もうちょっと頑張ってみる」
決意の証が、雫となって頬を濡らしました。

ピアノの練習するうちに、鍵盤を見ずに弾けるようになった…
ひょっとしたらレジも…
彼女は特訓を始めました。
大好きだったピアノを弾くように…

彼女はいつの間にか、レジ打ちの達人となっていました。
変化はすぐにあらわれました。
お客様の顔を見る余裕ができ、次第に覚え、話しかけることができるようになりました。

「あら、いい鯛ですね。いいことがあったんですか?」
「わかる? 孫が水泳で賞を取ったの」
「それはよかったですね。おめでとうございます!」
彼女はたくさんのお客様と話ができるようになりました。

そんな時、ある事件が起こりました。
それは店内アナウンスが何度も流れるほど忙しい日でした。
「お客様、どうぞ空いているレジにおまわりください」。
「重ねて申し上げます。どうぞ空いているレジにお回りください」。

彼女が見回してみると…。
彼女のレジにだけお客様の長い列が…。

「お客様どうぞあちらのレジへ」と店長。
「イヤよ、私は彼女と話をしにここに来てるの」。

その光景を目にして、彼女は手を思わず止めました。
あふれる想いは歓喜の雫となり、その場に泣き崩れました。

その後もレジからは、会話が途絶えませんでした…。

「涙の数だけ大きくなれる」木下晴弘著(フォレスト出版)

ぴあの屋ドットコム 石山

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ぴあの屋ドットコム代表 ピアノを弾く時にはリチャード石山と言われています。
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